【読書日記】人は言葉を探してる。 木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』
わたしみずからのなかでもいい
わたしの外のせかいでもいい
どこかに「ほんとうに美しいもの」はないのか
それが敵であってもかまわない
及びがたくてもよい
ただ在るということが分かりさえすれば
ああひさしくもこれを追うに
つかれたこころ
主人公テツコの彼、岩井さんが、ある日橋の上で、自殺しようとしていた女の子を助ける。
その女の子が好きなのが、この八木重吉の詩である。
他人の悪意、エゴ、はたまた自分の欲、見栄、、、
いろんなものがぐちゃぐちゃに絡み合って、ほどきたくてもほどけなくなって、もうどうしたらいいのかわからない。なんてことが、生きているとある。
そんな自分を救ってくれるのは、誰かの放つたった一言だったりする。
突然、胸のしこりみたいなのが取れたような、肩の荷が下りたような、ああもうちょいとだけ生きてみるかーみたいな気持ちになったりして。
それは一生懸命励まそうとして言ってくれたものだったり、単に口からぽろっと出ちゃった言葉だったり、いろいろだ。
だけどそれはまちがいなく、あなたにとっての魔法の言葉なのだ。
言葉の力を信じてみよう。そう思える小説である。