【読書日記】自分の幸せと、他人の幸せ。
月美は、家を離れて向かっている先が「わたし」であることに、偶然ではあるが、とても意味があるように思えた。本当の「わたし」は、こんなふうに、誰にも知られない場所にぽつんとあるもので、それを今は見失っているだけのような気がした。何が生きとし生けるものが幸せでありますように、だ。自分がくたくたになっているというのに、まだ人のために生きろというのか。
「世のため人のため」とか、「人生はギブだ!」とか言うけど、なんにせよ、まずは自分ありきだと思う。
それは決して自己中心的ということではない。
…いや、そうかも。
自分から世界を見ると、中心はいつだって、どこでだって自分なのだから。
自分の幸せセンサーを研ぎ澄ましておいて、それが他人の幸せセンサーと一致したな、というところで、ちょっとばかし頑張ってみればいいんじゃないか。別に頑張らんでもええけど。
「生きとし生けるものっていうのはさ、自分も入ってるんだよ」
月美が「えっ」とつぶやくと、元の道だった。