パンの耳がすき

読書日記と、たまにカフェ日記。植物日記も。

【読書日記】経済の意味ってなんだろう。 影山知明『ゆっくり、いそげ』

経済とは元々、中国の古典に登場する言葉で、「経世済民(=世をおさめ、民をすくう)」の意であるとされる。国内でも江戸時代には使われていたようだ。言葉としては、政治や生活も含めて「社会をつくる」というニュアンスすらそこには感じられる。

それがいつからか「ビジネス」という言葉に置き換えられていった。

ビジネスの由来は、bisig+ness。 bisigは古い英語で、ここから派生した形容詞形がbusyだから、「忙しさ」をその語源に持つことになる。時間をかけず、労力をかけず、コストをかけず、できるだけ効率よく商品・サービスを生産し、お金を稼ぐ。「経済」は「ビジネス」という語を経由して、気が付けば「お金儲け」の意で使われるようにさえなってきた。

 

本書の著者は、東京の西国分寺で「クルミドコーヒー」というカフェを経営している。彼がカフェ経営にかける思い、経営哲学を書いたのが本書である。

 

彼の哲学を一言で表した言葉が、タイトルの「ゆっくり、いそげ」である。

ビジネスとスローの間をいくもの。

 

本書を読むと、あまりに議論を単純化し過ぎだ、そんなの夢物語だと、批判したくなるかもしれない。しかしこれはすべて「理論」ではなく、著者が実際にやってみたことである。

 

彼が大切にしていることはシンプルだ。

 

「存在を傾けた、手間ひまのかかった仕事をちゃんとすること。」

そしてその仕事を受け取ってくださった方に、時間をかけてちゃんと寄り添い続けること。

 

これが「時間と戦う」のではなく、「時間とともにある」人の働き。

そうすればきっと時間は味方になってくれる。

 

もはや行き詰まりつつある資本主義社会に生きる我々が生きる道は、もうこれしかないんじゃないか。私はそう思う。